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2010年12月19日

クニマス

約70年前に田沢湖に玉川の酸性水を導き入れたことで絶滅したとみられていた同湖固有種の淡水魚「クニマス」が山梨県富士河口湖町の西湖で生息していることが確認され、地元の仙北市では担当課や観光協会がクニマスの「帰郷」に向けて動き出した。

ただ田沢湖の水は依然として酸性が強く現在クニマスが生存できる環境にない。
帰郷への道は険しいままだ。

思いもしなかった吉報を受け、秋田県は仙北市や田沢湖観光協会などとクニマス帰郷の共同プロジェクトを始めることになった。


21日に県と仙北市の担当課長らが初会合を開き、今後の方針について意見交換する。

また仙北市は門脇光浩市長らが25日から富士河口湖町や西湖漁協などを訪問することを決定。市企画振興課は「何とかして田沢湖にクニマスが戻れるようにしたい」と力を込める。

田沢湖畔で茶屋を営む三浦久さん(61)は、クニマス漁に使われた丸木舟の復元活動に取り組んできた。
2006年に85歳で亡くなった父久兵衛さんはかつてクニマス漁をしており、湖の再生運動に尽力。
西湖や本栖湖でクニマスを捜索したこともあった。

三浦さんは「世紀の発見。ほとんどあきらめていた。発見してくれた(京都大の)中坊徹次教授らに会って感謝したい」と喜びをかみしめる。

一方で、田沢湖の水は酸性のままだ。中和作業は続いているが、現在も酸性に強いウグイが湖畔で繁殖できるのみ。
三浦さんは「以前に放流したイワナやコイは、湖水に耐えられず生きていないと思う」といい、クニマスを戻すのは容易ではない。

県地域活力創造課は「まずは養殖のような形で県内でクニマスを増やせないか検討したい」と説明。
県と市などの会議や山梨県による生息地域調査の結果を受けて、今後の対応を決める方針だ。

三浦さんは「国策で湖をこんな環境にしてしまったのだから、国策で湖の再生をしてほしい」と強調。
こうつけ加えた。
「私が生きているうちに、クニマスが田沢湖に戻る日が来ればいいのですが」
【野原寛史】

毎日新聞より

投稿者 trim : 2010年12月19日 17:54