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2010年11月08日

救え若草山の芝

奈良市の若草山山頂にある国史跡「鶯(うぐいす)塚古墳」の芝の復元に、桂高農業専門科(京都市西京区)の生徒たちが挑んでいる。

人が踏んだり雨で土壌が流れて傷んだ古墳を、独自開発の芝の栽培技術で救う試みだ。

若草山を含む一帯は天然記念物のシカが増え過ぎて世界遺産の春日山原始林の存続を脅かしており、生徒たちは「芝の研究は森を救う鍵にもなる」と夢を描いている。


2、3年生でつくる「地球を守る新技術の開発研究班」。
3年前から授業で芝を研究し、本年度は1年生6人を加えた計21人が活動している。

屋上緑化を研究する過程で若草山に出合った。
日本固有の芝「ノシバ」が近畿で唯一自生する若草山から種子を採取、課題だった種子の発芽率向上に取り組んだところ、竹の繊維などで編んだ特殊なマット上で効率の良い栽培に成功した。

昨年初めて、この芝マットを古墳に移植
。若草山を管理する奈良公園管理事務所などの協力も得て、今年も10月中旬に100枚を植え付けた。3年青谷早希さん(17)は「種からしっかり芝が育ってくれてうれしい」と話し、定着状況の観察を続けている。

若草山の南東、御蓋(みかさ)山を含む春日山原始林(300万平方メートル)ではシカが入り込んで樹皮はぎや角研ぎを行い、深刻な被害が出ている。

大阪産業大の前迫ゆり教授(植物生態学)は「平成以降はシカが千頭を超え、エサの芝地面積から考えると多すぎる状態。

シカは昔から休むために森に入っていたが、今はエサ場となり、森の許容を超えてしまった」と関係の崩壊を指摘。

奈良県もシカの適正頭数や新たな共存を考える協議を始めた。


生徒を指導する片山一平教諭は「シカと森林の問題は全国で起きている。芝、特に地域固有のノシバを増やす技術は、シカが本来のエサの芝地で生きることを可能にし、シカと森林の共生にもつながるのではないか」と話している。


京都新聞より

投稿者 trim : 2010年11月08日 22:05