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2010年08月13日
「みなしご」から「みつばち」へ
タツノコプロの代表作「昆虫物語みなしごハッチ」(昭和45年)が、映画「昆虫物語みつばちハッチ~勇気のメロディ」(アミノテツロ監督)に生まれ変わり、現在公開されている。
主要設定はオリジナルの精神を生かして引き継ぎつつ、キャラクターデザインなどは時代に合わせて一新。
「紆余(うよ)曲折もあった」という新生ハッチ誕生の舞台裏をスタッフが語った。
フジテレビ系で放送されたオリジナルのハッチは、タツノコプロが「マッハGoGoGo」「ハクション大魔王」などのヒーロー・ギャグ路線に続き、メルヘン路線の新分野を開拓した作品だった。
人気に押されて全91話が制作され、昭和49年には続編も登場。
平成元年には日本テレビ系でリメークもされた。
主人公のハッチが生き別れた女王バチの母親を捜して旅し、その道中で成長していく姿を描く基本コンセプトは映画版も同じだ。
これを縦軸にして、横軸には旧作になかった人間の少女、アミィとの交流などのエピソードを配置した。
環境問題が重要テーマとされているのも旧作との違いで、ミツバチが世界的に減少していることが映画化の理由の一つだったという。
映画版ではタイトルの「みなしご」が「みつばち」に変わった。
この件についてプロデューサーの栃平(とちひら)吉和さんは「最後までかなりもめた」と明かす。
「まず、『みなしご』(両親や保護者がいない子供)は死語になった。
それに旧作は親がいないハッチがいじめられたり、陰湿な描写も多かった。
今回は希望や夢、友情をテーマに、家族で映画を楽しんでほしいという思いがあった」
ハッチのパッチリとした目にも、その思いが表れた。
旧作は「けろっこデメタン」「樫(かし)の木モック」といった当時のタツノコ作品とも共通する、涙目のようなとろんとした目。
今の子供たちに受け入れられる明るく元気なハッチにしようと、当初は体の色を本物のハチと同じにしたり、体形まで変える案があった。
「私が守らないと、ハッチじゃなくなってしまう怖さがあった」と語るのは、キャラクターデザインを手がけた河井ノアさん。
美術学校卒業後の昭和47年に竜の子プロ(当時)に入社し、ハッチの生みの親でもある創業者、故吉田竜夫社長に師事。
その実績を買われ、映画版のメーンスタッフに選ばれた。
河井さんは「吉田さんと心の中で“どこまで変えていい?”と会話しながら、色やフォルムといった乗り越えてはいけない幾つかの垣根を作った」という。
完成した映画を見て、「私のルーツはやっぱりタツノコだとしみじみと思った」という河井さん。
「ハッチは小さくてか弱いハチの子だけど、大きな勇気や 愛、友情で周囲を巻き込んでいくヒーロー。いじめに対しても一人で『ダメだ!』といえるヒーローが現れてほしいという願いは、旧作にも、この映画にも込められている」と語った。
映画版では、人間の女の子、アミィが主要キャラクターとして初登場する。
昆虫との“共演”では大きさが違い過ぎるため、ハッチの体長を3㌢と大きめに設定。
手前にハッチを置いて遠近法で対等に見せたり、逆に小さくて見えないさまをギャグにしたりと苦心したという。
産経新聞より
投稿者 trim : 2010年08月13日 10:59