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2010年08月12日

山小屋トイレ助成

環境省は11日、行政事業レビュー(事業仕分け)で「廃止判定」を受けた山小屋のトイレ整備事業について助成を継続する方針を固めた。

「利用者負担が基 本」というのが仕分け判定の理由だったが、補助金がない場合、登山客は1回1,000~2,000円の利用料を支払うことになり、登山関係者が「トイレ補助は環境保護に必要」と反発していた。

この日、専門家による山岳地域環境保全対策等検討会は「山小屋は公共的な役割を果たしている」とした中間報告案を出した。


検討会の中間報告案は「ティッシュペーパーが散乱し、垂れ流しトイレが今もある」と指摘。

山のトイレについて「公共的な民間の山小屋を活用、整備のため5~10年といった一定期間の助成が必要」と結論づけた。

ただし、対象地域は国立公園や国定公園に原則限定。
有識者による第三者委員会が助成の必要性を判断し、直接山小屋に補助するのではなく、山域ごとの地域協議会などを通じて、計画性と透明性を確保するとした。

百名山ブームなどで特定の山に登山者が集中、特に世界自然遺産を目指した富士山で登山者が残したティッシュペーパーや汚物が散乱、垂れ流しの実態が明らかになった。

国は平成11年から国立公園や国定公園の山小屋がトイレを整備する際、補助事業を開始、10年間で100カ所を整備。

山小屋を営む民間事業者や自治体が トイレを建設した場合、事業費1,000万円以上は国が半分を補助する。

今年度も約1億2,000万円の予算で5カ所を整備する予定だ。

しかし、6月に行われた事業仕分けで、
「山小屋には競争原理が働かないため、規制で山小屋自身に整備してもらい登山客からの利用料で回収した方が効率がよい」
「受益者、汚染者負担の原則から補助は説明がつかない」
などという理由で「廃止」と判定された。

山のトイレはかつては貯留式で地中に染みこませたり、沢に垂れ流すなどしていたが最近では、おがくずやカキガラを使って微生物で分解させるバイオトイレが導入されるようになっている。
しかし、ヘリで機材を運ばなければならない地域もあり、設備自体も数千万~数億円かかる。

北アルプスで槍ケ岳山荘など5つの山小屋を経営する「槍ケ岳観光」の穂刈康治社長は「4,000万円かけて1つの山小屋のトイレを整備した。費用を回収するために利用客に1,000円の利用料を要求することは事実上困難」と話す。


登山客のマナーの問題もある。ほとんどの山小屋で維持費のために100~200円のチップを入れる箱やかごを置いているが、チップを入れない登山客も少なくない。消耗品の供給や清掃など維持費すらチップで捻出(ねんしゅつ)するのが難しいという。


吉田正人・筑波大准教授の話
「山域によってはトイレを建設すること自体が自然破壊にもつながる。利用者には携帯トイレを使ってもらうなど、山域や場所ごとに一つ一つ評価して、めりはりをつけた支援が必要だ」


登山家の田部井淳子さんの話
「山は登山愛好家だけのものではなく国や国民全体の宝物。登山は自然の恩恵を受けていることを知るいい機会だが、トイレが汚くては、それだけで将来世代の子供が山を嫌いになってしまう。大きな損失だ」

【杉浦美香】


産経新聞より

投稿者 trim : 2010年08月12日 09:37