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2010年01月08日
「植物工場」で“未来型野菜”
農業ブームの中、「植物工場」生まれの野菜に熱い視線が注がれている。
自然環境に関係なく、通年にわたって食卓に並ぶ。
食料自給率(約41%)の低い日本向き“未来型野菜”と期待する声もあり、「土や虫がつかない」植物工場が野菜の概念を変えるかもしれない。
「1つの品種を作るのにほぼ10年。野菜のシェアは品種の力で決まる」
種苗メーカー「サカタのタネ」君津育種場(千葉県袖ケ浦市)の宮崎省次場長は、寒さや病気に強く、おいしい野菜の開発に汗を流してきた。
あらゆる環境に一品種でまかなえるタネの開発は研究者にとって壮大な夢。
だが、現実には季節や寒暖の差、土壌の種類によってまかれるタネは千差万別で、露地野菜はまさに生産者泣かせだ。
東京・四谷のレストラン。
首都圏のシェフや食通ら8人が集まった。
まるで「植物工場vs露地栽培の野菜対決」だ。
参加者はレタスやバジル、ルッコラなど4種類の野菜を試食。
「言われないと分からない」「シャキシャキ感がある」「香りが適度。葉も柔らかい」。
植物工場産を抵抗なく受け入れたシェフも多く、ルッコラについては正しく識別できた参加者は2人だけだった。
主催したのは日本最大のグルメサイトを運営する「ぐるなび」(東京都千代田区)。
「食材」を中心としたネットワークを模索し、植物工場は新事業の一つという。
同社のシニアプロモーションマネジャー、京極政宏さんは近い将来、客がオーダーメードで野菜を注文する飲食店の登場を予測する。
「植物工場の野菜は洗わずに済む。飲食店にとっては手間が省け、品質が均一という点でもシェフの選択肢の一つになりやすい。店内に冷蔵庫大の植物工場を置けば、客の注文に応じて野菜を提供できる」
太陽光がなくても栄養面で引けを取らない。
植物工場の製造・販売を手がける「エスペックミック」(愛知県大口町)の調査では、カロテンやビタミンCは露地栽培より上回った。
同社事業部の鐘ケ江修司さんは「植物工場の野菜は形がそろい、苦みやアクが少ないので料理人だけでなく、野菜嫌いの消費者にも抵抗が少ない。食糧難の時代の切り札になるのでは」。
LEDによる植物生育装置は国際宇宙ステーションの実験棟「きぼう」でも搭載された。
将来、宇宙での滞在が長くなれば、地球から食料を持ち込むよりも宇宙空間で植物を栽培・収穫したほうが効率的だ。
矢野経済研究所によると、2020年度における植物工場の市場規模は現在のほぼ3倍に当たる129億円。
商社、ゼネコン、医療メーカーなどの新規参入が相次ぐとみられる。
東京農大の高辻正基(まさもと)客員教授は「植物工場の野菜を露地野菜と価格競争させるのでなく、まったく新しい食材として取り扱う発想が大切」と指摘。
そのうえで、「米国ではニューヨークの摩天楼で農業ができるかどうか実験が始まろうとしている。地球を癒(い)やしながら利用する点で、土を使わず、水をリサイクルする植物工場は未来型のエコ農業」と占う。(日出間和貴)
産経新聞より
投稿者 trim : 2010年01月08日 11:12