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2009年12月07日
キーコーヒー「バイオマスチップ」
キーコーヒーは、コーヒーの製造工程で排出される「シルバースキン」と呼ばれるコーヒー豆の皮のリサイクルに力を入れている。
2007年には薄皮とプラ スチック樹脂を混ぜたバイオマスチップの開発に成功し、これまでにボードゲーム「オセロ」やカプセル入り玩具、パズル、植木鉢などに応用されたほか、今年8月には東邦金属工業が製造するカセットボンベのキャップ部分にも採用された。
シルバースキンのリサイクルで陣頭指揮をとる宗威史・経営企画本部開発研究所長は「今後も研究を進め、もっと多くの製品に採用されるようにしたい」と意気込んでいる。
シルバースキンは、コーヒー豆を包んでいる薄皮のこと。
薄皮は渋みや雑味の原因となるため、香り豊かなコーヒーを作るには“天敵”ともいえる存在で、その大部分は精選過程で取り除く。
コーヒー豆から出る薄皮の量は、全体の約1.5%にすぎないが、南米やアフリカ、アジアなど世界各地からコーヒー豆を輸入する同社が年間に排出する薄皮の量は、年間400~500㌧にも達する。
家庭用コーヒー市場の拡大などでコーヒー豆の消費量増加に伴い、薄皮の排出量も増加の一途をたどっている。
薄皮はかつて焼却処分していたが、環境問題の観点から再利用の方法を探り、注目したのがコーヒー豆が持つ脱臭効果で、まず実用化したのが農業用だ。
家畜用の敷きわらや家畜のふんと混ぜて肥料にすると、脱臭効果が発揮されるからだ。
そこで、東北(仙台市泉区)、関東(千葉県船橋市)、中部(愛知県春日井市)、九州(佐賀県鳥栖市)の国内4工場で周辺の農家への供給を始めた。
「利益よりも社会貢献」(宗所長)とし、農家には無料で提供して喜ばれているが、工場まで取りにくるのが条件。
しかし、農家の多くが工場に引き取りに訪 れるのは農閑期だけで、繁忙期にはほとんどこない。
その間も工場ではコーヒーの生産が続いており、農家の繁忙期にはシルバースキンがたまってしまうことに頭を抱えていた。
「農家だけでなく、よりたくさんの人に使ってもらうには、付加価値を高めなければならない」(宗所長)との思いから、別のリサイクルの研究を始めた。
だが、独自の研究もなかなか進まない。
行き詰まっていたころの2004年、千葉県産業振興センターに相談にいくと、間伐材を利用したバイオマスチップ製造で実績のある企業を紹介された。
そこから共同研究がスタートし、2007年にはシルバースキンと水を混合させてコーヒーペレットを作り、同ペレット7割とプラスチック樹脂3割の混合率のバイオチップを完成。
玩具などへの商品化につながった。
それでも、現時点でバイオチップに利用されるシルバースキンは「全量の約10%にも満たない」(同)のが実情。
再利用先の多くは農業向けで、用途拡大はまだまだ必要だ。
宗所長が描いているのが、牛など家畜の飼料に混ぜるという試み。
シルバースキンに含まれるカフェインに利尿作用があることから、家畜の体調がよくなると期待されている。
ただ、「カフェインで家畜が興奮する恐れもあり、十分な検証が必要」とする。
加えて、「まだ検証中だが、コーヒーの抽出液を小松菜に吹きかけると成長を促進し、害虫もつきづらい」などと研究テーマをあげる。
用途拡大に向けた実証研究はまだまだ続きそうだ。(松元洋平)
フジサンケイ ビジネスアイより
投稿者 trim : 2009年12月07日 12:07