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2009年09月05日
リヤカー 都会で復権
搬送用具の“雄”として戦後日本の復興を支えたリヤカー。
廃品回収や屋台といった従来の使い方に加え、都心のオフィス街では、リヤカーを引いた電動アシスト自転車で疾走する宅配業者の姿が目立つ。
背景には駐車監視員制度で駐車場が少ない都心でのトラック輸送が難しくなったことや、エコブームで自転車が見直されてきたことがある。
東京・大手町のオフィス街を疾走する運送会社の電動アシスト自転車。
後ろに付いているのは、両側に小さな車輪が付いたリヤカーだ。
荷物を詰めた箱が載っている。
リヤカーを作ったのは、東京都荒川区の「ムラマツ車輌」。
戦後間もない昭和26年創業の同社は、在庫を持ちすぐに販売できるリヤカー業者としては日本唯一という。
同業者が次々と廃業する中、軽いアルミ製の折りたたみ式やホテル向けのワゴン風リヤカーなど新たな商品の開発で、「細々と生き残ってきた」(村松孝一社長)。
消えゆく運命と思われたリヤカーに再び光を当てたのは、平成18年に始まった駐車監視員制度と折からのエコブームだった。
先駆者といえるのが、ヤマト運輸(東京都中央区)だ。
それまでは台車で配達していたが、長距離を運ぶ際や荷物が多い場合には不向き。
そこで、14年に電動アシスト自転車にリヤカーを組み合わせた「新スリーター」を導入した。
排ガスが出ないエコ効果に加え、「自転車なので発進時などに大きな交通事故を起こす危険が少ない。ドライバーの精神的負担も軽くなった」(同社)と意外な効果もあった。
「駐車場所を見つけるのが難しい都会でも機動力を発揮でき、荷物も多く積める」と好評で、19年の約800台から今年3月末には約1,700台と倍以上に増えた。
今年に入って、同様のリヤカー付き電動アシスト自転車を導入した業者もある。
宅配業者「エコ配」(中央区)は「まだ全国で数十台が走るだけだが、渋滞に巻き込まれず小回りが利くのがよい」と、今後も導入を進める考えだ。
ムラマツ車輌は、どんな自転車にも付けられるリヤカーのジョイント(接続具)を開発。
丈夫なためすぐに買い替えることがなく、生産できる台数にも限りがあるリヤカーだが、宅配業者の導入で同社の売り上げは増えており、今後も一定の需要が見込まれている。(道丸摩耶)
【用語解説】リヤカー
大正期に伝わった側車付きバイク(サイドカー)を、自転車の後ろに取り付ける形に改良したのが始まりといわれる。
後ろ(rear、リア)につける車(car、カー)であることから、和製英語で「リヤカー」との名が付いた。
戦前から戦後にかけ、野菜や魚の引き売りなど人力で物を運ぶ際に多く使われたが、自動車の普及とともにその多くが姿を消した。
産経新聞より
投稿者 trim : 2009年09月05日 16:24