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2009年08月30日
茶殻が七変化!
伊藤園が緑茶飲料「お~いお茶」の製造過程で排出される茶殻のリサイクル事業に取り組んでいる。
これまでに世に送り出したリサイクル製品は、7月下旬に 発売した茶殻入り名刺用紙「マルチカード〈名刺〉茶殻リサイクル紙」で約30種類に達した。
技術面でも、水分を含んだままの茶殻を有効活用するという独自 のシステムを確立し環境への配慮を徹底している。
伊藤園が年間に排出する茶殻の量は、平成19年度で43,000㌧に上る。
緑茶系飲料の売り上げ拡大で年々増え続けており、この処理が大きな懸案となっていた。
以前は肥料としてリサイクルしていたが、茶殻にはカテキンやビタミンなど有効成分が多く、抗菌・消臭効果もあるため、平成12年から身近な製品に利用することを前提に社内で本格的な研究に乗り出した。
当初から研究に当たった開発部の佐藤崇紀主事によると、最初は茶殻を乾燥させ、多くの製品に配合する方向でリサイクル技術の開発に取り組んだ。
だが、次第に「これでいいのか」と違和感を覚えるようになる。
「茶殻を乾燥させるのに使うエネルギーや乾燥機の導入費用を試算すると、(コストが)けた違いの数字になり、現実的でないことに気づいた」という。
さらに、乾燥工程で石油系燃料や電気を使うことにも「環境に悪いリサイクルをやっているのでは」と、抵抗があった。
このため佐藤氏は、水分を含んだままでリサイクルする方法を模索し始める。
技術開発に協力してくれる企業を探したところ、畳材料製造の北一商店(東京都世田谷区)が、畳床用のボードに混ぜ込むこと素材として採用してくれることになった。
ただ、水を含んだままの茶殻は腐りやすいという問題があった。
実際、運搬時にその重みによって内部の温度が上昇し、何度も腐らせてしまう失敗を繰り返した。
しかし試行錯誤の末、平成13年末までに水を含んだ茶殻を保存する技術や腐らせずに運搬する技術、原料として配合する技術を次々に開発し、リサイクルシステムを確立した。
製品の第1号として平成15年に生まれたのが、畳床に茶殻配合ボードを使った「さらり畳」だ。
さらに、リサイクル推進の上で分岐点となったのが、日本油脂(現日油)と共同でプラスチックへの配合に成功したことだ。
平成15年夏に抗菌効果のある「茶配合樹脂ペレット」を開発。
樹脂化に成功したことで、最終製品への応用が飛躍的に高まった。
同年8月に樹脂の板材を開発し、平成16年に外側に板材を張り付けた環境配慮型の自動販売機を京都市伏見区の総本山醍醐寺に設置したほか、ベンチやボールペンなど採用製品の幅は大きく広がった。
佐藤氏は茶殻リサイクルの事業活動を「エコ仲間作り」と呼ぶ。
製品が多くの企業の協力で成り立っているためだ。
茶殻入り名刺用紙の製品化でも、エコ仲間は広がった。
伊藤園は昨年5月から茶殻配合のリサイクル名刺を社員全員が持つようになったが、これを見たOAラベルなどのメーカー、エーワン(東京都千代田区)が「見るだけで環境にやさしいと分かる用紙がほしい」と要望し、茶殻入り名刺は商品化されることになった。
伊藤園は平成14年にリサイクル製品の専門組織を特販部内に設け、エコ仲間作りを続けている。
現時点でリサイクルしている茶殻の量は全体の5%未満、売上高も前年度で2,500万円にすぎないが、今年度はこれを倍増させる計画だ。
新製品をコンスタントに生み出し、茶殻リサイクルを早期に収益事業へと育て上げることを目指している。
産経新聞より
投稿者 trim : 2009年08月30日 16:35