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2009年07月13日

「複合型浮島植生工法」

準大手ゼネコンのフジタが、異なった働きを持つ植物を人工の浮島に植え、水質浄化する複合型浮島植生工法(フェスタ工法)を開発し、低コストで富栄養化した湖沼をきれいにする技術を確立した。

フェスタ工法は、鋼製のフレームにペットボトルを再利用したマットを敷いた“浮島”を設置する水質浄化方法

日差しを遮り植物プランクトンの発生を抑制するショウブやヨシ、ヒメガマといった植物を植えたものと、植物全体が水中にあるササバモやエビモ、ホザキフサモなどの沈水植物を再生する浮島を水面に設置。

湖沼の栄養塩を吸収することで水の透明度を高め、水環境が改善する。


湖の一部を閉め切った隔離水域で水質を浄化し、沈水植物を再生し、徐々に隔離水域を広げることで、沈水植物群落が拡大しこれにより湖沼全体の水域が改善し生態系の再生を実現する仕組みだ。

従来のプラントとは違い、水域面積の5%の水浄化用浮島を設置するだけですむ。


フジタがこの実証実験を行ってきた湖のひとつが埼玉県蓮田市の山ノ神沼。
環境省の環境技術開発等推進費を活用した福島大学などとの共同実験だ。
かつてはわき水がわき多くの生物が生息し、泳ぐこともできたが、近隣に住宅が立ち並び、生活排水が流れ込み水質が悪化、さらに近くの家畜飼育施設の糞(ふん)尿などの影響で富栄養化も進行していた。

この沼に水浄化用浮島25基と、沈水植物用浮島8基を設置したのは2007年7月。
透明度が高まり水底に日差しが差し込むようになれば、浮島から自然に分離していた沈水植物が水底で生育し沈水植物の群落が拡大。

浮島撤去後も水域の自然浄化機能を維持する役割を担えるようになる。

1週間ほどで透明に近い水質に変化し、現在も実験を行っている隔離水域とそれ以外の水域の透明度の差は歴然だ。
浮島設置後1年ほどで約3倍の透明度の改善が図れたという。
山ノ神沼では沈水植物が水域の3割まで繁茂したため、8月には浮島を隔離水域から撤去する。


浮島に植える植物には、アレロパシー物質と呼ばれる植物プランクトンの増殖を抑制する効果があるとされる種類を活用することで、より高い浄化能力を期待できる。
今後は、沈水植物の種類に応じた浄化能力をデータ化するとともに、沼全体を浄化するにはどのくらいの沈水植物が必要になるかなどを検証する。
技術センターカスタマープロジェクト室の島多義彦主席研究員は「できれば沼全体の浄化まで持っていきたい」と意欲的だ。

実験の効果は水の透明度向上にとどまらない。
実験水域は、ミジンコなどの動物プランクトンや魚類、昆虫などさまざまな生物が生息し、かつての生態系を取り戻しはじめている。
浮島の一つに水鳥が巣を作ってしまったため、浮島に近づいて作業できないというアクシデントすらあったという。

動力や薬剤を使用せず1㌶の池沼を5年間浄化する維持管理を含めたコストは、プラントを利用する浄化方法の半分程度に抑制できるという費用面でのメリットに加え、自然との共生も促進できるのがフェスタ工法だ。

島多主席研究員は「コストがかかるためあきらめていたような場所でも、水浄化が可能になる工法として広めていきたい」と語る。
受注例はまだないが、技術的にはすでに請け負える段階になっているという。(門倉千賀子)


フジサンケイ ビジネスアイ

投稿者 trim : 2009年07月13日 11:14