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2009年07月08日
エコ旅行にも楽しさ
温暖化ガスの排出枠を購入し排出量と相殺するカーボンオフセット商品が花盛りだ。
旅行関連商品でもバスツアーや宿泊プランでオフセットが相次いで導入されている。
JTB関東が旅行業界初のカーボンオフセット旅行を売り出したのは2007年。
担当した交流文化事業部の樋口誠司・企画開発マネージャーは、今も環境関連商品の企画を練り続けている。
「ターゲットは『エコスリープ層』。自ら環境保護活動に動くほどではないけれど、機会があれば参加する人たち」。
樋口氏が立ち上げたブランド「グリーンシューズ」は、カーボンオフセット旅行を中心に一連の環境保護関連商品をまとめたブランドだ。
新商品を投入する際には、社会に影響力を持つオピニオンリーダーを攻略するのが効果的といわれる。
しかし樋口氏は「環境への意識が高い人は、自ら自然保護活動のための旅にでかけている」とみる。
グリーンシューズではもっとすそ野を広げたいという思いがあった。
これまでカーボンオフセット関連商品を利用した人は15万人にのぼる。
樋口氏は2006年にJTBが地域ごとの事業会社などに分割されたのを機に、JTB関東の交流文化事業部に異動した。
与えられた役割は、旅行の周辺で新規事業を始めること。
社長に「好きにやれ」といわれて戸惑ったが、大手企業からベンチャー企業、非営利団体まで1年間で延べ1,000人に会い、ヒントを探した。
環境問題に意識が向かったのは、封筒を使わない簡易包装のメール便「エコメール便」と出合ってからだ。
「温暖化でハワイのビーチが水没したら、ハワイ旅行いけなくなり、ハワイに300人いるJTBの従業員も困る。大変なことだと思った」と振り返る。
そこで考案したカーボンオフセットのツアーには社内で賛否両論が出たが、懐疑的な見方が優勢だった。
「今なら賛成派が多数を占めるだろうが、当時はまだその段階ではなかった」。
発売3カ月前の2007年1月には社内外への啓蒙活動として、社内で自然エネルギーの購入を促したり、旅行時に使えるごみ袋を客に配ったりした。
発売から約1カ月後、取引先の社内旅行にオフセットと合わせてハシの持参と海岸清掃を勧めた。
反応は「日々の疲れを癒やしに行くのだから、ハシの持参やごみ拾いは勘弁して欲しい」。
旅行の楽しさを壊さないのが重要だと気付いた。
その点で、カーボンオフセットがもっとも効果的であることも分かった。
グリーンシューズの商品はオフセットを導入したクオカードや駐車場利用券、スキー場のリフト券などに広がった。
この企画に触発されて、JTB西日本が休眠状態だった環境配慮型ツアー「Lovearth(ラバース)」を復活するなど、グループ会社への波及効果も出てきた。
樋口氏自身、「環境マインドはあったが行動として表に出ていなかったタイプだった」。
自らがグリーンシューズが狙うエコスリープ層であり、だからこそ、この仕事が自分に向いていると感じる。
今後は「旅館のエネルギー消費を減らすなど、もっと旅行者のライフスタイルを変えることをしたい」。
車よりも電車での旅を促す方策なども考案中という。(原克彦)
日経流通新聞より
投稿者 trim : 2009年07月08日 13:09