« オリックス 宮古島マングローブの救世主に | メイン | 野菜、魚も「見える化」 »

2008年12月26日

ノーベル賞受賞者ら顧問に

理科離れが進んでいると指摘されるなか、ノーベル賞受賞者をはじめとするトップクラスの研究者らを顧問に迎え、95億円の巨費を投じるなど、高校としては相当の充実度を誇る理数科公立高校が来年春、横浜市に開校する。

市立横浜サイエンスフロンティア高」がそれだ。

同高は市立高校再編計画の一環で閉校となる鶴見工に代わって新たに誕生する。

科学技術の分野で将来活躍できる人材を育てるのが狙い。
来年開港150年を迎える市記念事業だ。


設備面の充実はもちろん、目を引くのがスーパーアドバイザー(最高顧問)だ。
ノーベル物理学賞の小柴昌俊・東大特別栄誉教授、同化学賞のハロルド・クロトー・フロリダ州立大教授ら2人のノーベル賞受賞者をはじめ、元文相で日本科学技術振興財団会長の有馬朗人氏ら計5人の著名研究者が名を連ねる。
ソニーや日立製作所など有力企業の技術者や大学教授が顧問に就任、講義や実験指導を担当する。
市教委の同高開設準備室の内田茂部長は「理数教育に重点を置いた高校も出てきたが、質と量が違う」と胸を張る。

1、2年生の必修に組み込まれた科目「サイエンスリテラシー」(科学的素養)は大学顔負け。
生命科学、ナノテク・材料、環境、情報通信の先端科学4分野の実験を体験した上で、自分でテーマを決めて研究し、成果発表まで経験させる。

募集入学定員は240人を予定。
大学入試を心配せずに高校、大学と研究活動に打ち込めるようにと、横浜市立大へ無試験で入学できる特別枠(10人程度)を設定。
2年時に希望者の中から成績などを考慮して約40人を選出し、その後、大学の講義や実験指導、リポート提出などの総合評価を基に、最終的に10人程度に絞るという。


考えない子どもを一生懸命製造している――。
ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英・京都産業大教授が嘆いたように、小中学生の理科離れは深刻だ。
2007年に実施された小学4年生と中学2年生対象の「国際数学・理科教育動向調査」(TIMSS)。
日本のテストの平均点は中2が3位(48カ国・地域中)、小4が4位(36カ国・地域中)と上位だった。
だが「理科の勉強が楽しいか」との質問では一転した。
「強くそう思う」の回答は中2が18%で国際平均値(46%)を28ポイントも下回り、下から3番目だった。

そうした現状を踏まえて、同高は市内の小中学生や小学校教員を対象に理科教室などを通して「将来的には『サイエンス教育』の中核施設としての役割を担っていく」(内田部長)ことも視野に入れている。

高度経済成長期には京浜工業地帯への人材を育成してきたのが鶴見工だった。
産業構造が変わる中、今度は科学技術の人材育成の「フロンティア」に、との期待がかかる。
いずれは卒業生の中からノーベル賞学者を羽ばたかせたい――。
関係者の大きな夢だ。


毎日新聞より

投稿者 trim : 2008年12月26日 14:03