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2008年12月24日

戸田塩、昔ながらの作り方

沼津市戸田(へだ)の特産品、「戸田塩」が人気を集めている。

地元の主婦らが、海水を沸騰させて塩を採る昔ながらの作り方を再現。

今年10月には戸田塩を使った町おこしが評価されて、「豊かなむらづくり全国表彰事業」で農林水産大臣賞を受賞した。

戸田の“おばちゃん”たちが作る塩の魅力を探った。

浴槽ほどの釜に海水がなみなみと張られ、白い湯気が立ちこめる。
パチパチとまきが焼ける音がする中、エプロン姿の女性たちが、釜の底の塩をざるでさらう。
色は雪のように真っ白で、なめるとほのかに甘い。

海面下15㍍からくみ上げた駿河湾の黒潮を釜に入れ、まきを使って約13時間かけて沸騰させ続ける。
1日で、600㍑の海水から採れる塩はわずか14㌔。
「本物は半端じゃできない。混ぜ物がなく自然のままだから、うまみがあるでしょ」と、NPO法人「戸田塩の会」の菰田智恵理事長はにっこりと笑う。

戸田港はかつてはカツオ漁船などでにぎわったが、漁場制限などの影響で約20年前から衰退が始まり、加速した。
見かねた主婦たちが立ち上がった。
注目したのが、約1,500年前の古文書に天皇に献上されたとの記録が残る戸田塩。
「塩を復活させて戸田をPRしよう」と、1995年に同会を設立した。

ところが復活と意気込んでも、作り方を記した文献はまったくなかった。
地元の長老に話を聞いたり、全国の塩作りを見学して回り、海水を釜で沸かして塩を採るという江戸時代の伝統的な製塩方法にたどり着いた。

この方法は単純ゆえに、まきの微妙な火加減で味や色が変化する。
できあがった塩をなめて、絶妙の火加減を探り当てるのに4年かかった。

2000年には世界一の塩と言われるフランス・ブルターニュ地方のゲランド塩田も見学した。
海につながる川の環境を守る地元住民や職人たちの姿が印象的だった。
塩作りから海や山の大切さに気付き、海岸清掃や水源の草刈り、天然のせっけん作りを始めていた菰田さんたちは、「私たちの取り組みは間違っていなかった」と確信したという。

現在、戸田塩を使ったソフトクリームや食パンなどが地元業者の協力で開発され、新たな特産品となっている。
県内外の小学生の体験学習も定着。戸田塩による町おこしが形になり始めている。

「9年前に食べた戸田塩が忘れられないって、東京の女性が訪ねて来た。それが一番うれしいね。量産はしない。おばちゃんたちがじっくり作るからこの味が出せる」と菰田さん。
今日も日本一の塩作りを目指して、釜に向かう。
戸田塩は200㌘で600円。
電話で同会(0558・94・5138)に連絡すると送ってもらえる。


毎日新聞より

投稿者 trim : 2008年12月24日 13:48