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2008年10月20日
カーボンフットプリント
経済産業省は、食品や日用品を対象に、製造から流通、廃棄、リサイクルまでのライフサイクル(商品の一生涯)を通じて排出される二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を商品に表示する「カーボンフットプリント(CF)制度」の試行を来年度から開始するが、そのためのルールとなる指針原案を策定した。
消費者や関係機関の意見を聞いたうえで来年1月までにルール内容を取りまとめ、来年度から環境保全に関心の高い流通業、食品メーカーなど約30社の協力を得て試行を開始する。
期間は3年を予定している。
試行に先だって協力企業が製造したCF表示付き商品を環境展示会「エコプロダクツ2008」(12月11~13日、東京ビッグサイト)に出展し、企業や消費者の理解と認知度を高める考えだ。
“炭素の足跡”を意味する「カーボンフットプリント」は、商品のライフサイクルを通じて排出されるCO2量を「見える化」することで、消費者に温暖化防止に寄与する商品の選択機会を増やし、同時に、メーカーに対しても環境に配慮した製品開発を促すことを狙いとした制度。
対象の温室効果ガスは「京都議定書」で対象としたCO2、メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類、6フッ化硫黄の6種類だが、CO2排出量に換算して表示する。
CFについては、国際標準化機構(ISO)技術委員会でも国際標準規格を2011年度末までに規定する準備を進めているが、日本も自主的にCFを推進することで、国際標準のルール作りに日本の方式が反映されるように働きかける。
海外ではすでに英国、フランス、韓国が試行を開始している。
経産省が策定した原案は、
(1)原材料・部品
(2)製造
(3)流通・販売
(4)消費・使用・維持管理
(5)廃棄・リサイクル
――の5段階のCO2排出量を対象にする。
消費現場や廃棄、リサイクルにかかわるCO2排出量も含めた総排出量を表示する考えだ。
家電など耐久消費財は、製造段階のCO2排出量を削減しており、製品の省エネ性能も向上している。
半面、「製品が長寿命化しているため、使用期間の消費電力量が増え、その分、CO2排出量も多くなる」(経産省)傾向にあることから、家電メーカーなどからは一律的な表示によるイメージ低下を懸念する声もある。
長期間使用する耐久消費財は消費現場でのCO2排出量の測定も難しいため、経産省は、まず、食品や日用品で試行する計画だ。
◇
【予報図】
■算定基準の情報提供必要
CFはCO2の排出削減にあたって、カーボン(炭素)市場などを通じて他の場所で実施された削減量や吸収量を獲得し、自らの排出量を相殺する「カーボン オフセット制度」を具体化するうえでの指標になる。
排出量表示の少ない商品を選択することで、自らの削減努力による数値算定の目安になるからだ。
経産省が策定したCF制度のルール原案で算定が最も難しいのは、消費段階のCO2排出量も積算して表示するとしている点だ。
流通段階の排出量は、物流や販売店調査などである程度は分かる。
経産省もCFを導入する企業のために原材料と並んで物流におけるCO2排出量のデータベース構築に乗り出している。
一方、消費段階で算定が課題となるのは、長寿命化でCO2排出量が増える家電製品だけではない。
食品も、ポテトチップスなど常温で流通し購入から消費までの間にCO2がほとんど排出されない製品の算定は行いやすいが、冷凍食品は冷凍保存や電子レンジ使用による電力使用量がCO2排出量に換算されて算入される。
また、ビールなどは冷蔵庫で冷やす時の電力が算入されるが、店頭で冷蔵販売される場合と常温で箱売りされる場合ではCO2排出量が異なることになる。
どの販売方法を基準にして、CO2排出量を定めるのかは今後の課題だが、単にCO2排出量を表示するだけでなく、その算定基準も含めた情報提供も重要になりそうだ。
算定基準も含めた情報がないと消費者が混乱し、身近なCO2削減活動につながるCF制度がうまく機能しなくなる可能性も否定できない。
産経新聞より
投稿者 trim : 2008年10月20日 17:16