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2008年09月26日
萌えキャラの米袋
日本3大盆踊りに数えられる「西馬音内(にしもない)盆踊り」で知られ、歴史的文化財が多く残る秋田県羽後町。
この「緑と踊りと雪の町」が近年、都市部の若者、特にオタクと呼ばれる人々から熱い視線を浴びている。羽後町が“萌(も)え”始めたその理由とは?
JAうごは今月、「あきたこまち」の新しい米袋パッケージの導入を決めた。
「百貨店の雰囲気や客層が異なる」と都内の百貨店から、この袋のコメの取り扱いを断られたものの、ホームページ(HP)で予約販売を始めた22日から、わずか2日で600件近い申し込みが寄せられた。
購入者は北は北海道、南は沖縄まで全国に及ぶ。
購入層は主に若い男性。
従来の購買層から最も遠い存在だった彼らを引き付けたのは、新パッケージのイラストだ。
デザインは市女笠(いちめがさ)姿に稲穂を抱えた伝統的なあきたおばこ(秋田弁で10代後半の美少女を指す)だが、斬新だったのは少女がいわゆる“萌え”キャラだったこと。
作者はテレビアニメにもなった「らぶドル ~Lovely Idol~」などの作品で知られる人気イラストレーター、西又葵さんだ。
同JA営農販売課の佐々木常芳課長は「農作物と萌えキャラのタイアップは全国初かもしれない。予約開始前から問い合わせのメールが殺到し、これほどの反響とは予想していなかった。若者のコメ離れを食い止めるきっかけにしたい。他の農作物や四季折々でもデザインをお願いできれば」と期待を込める。
今年6月、同町の夜市祭「かがり火天国」の新イベント「かがり美少女イラストコンテスト」にゲスト出演した西又さんが、同町の自然や文化に感銘を受けたのがイラスト提供のきっかけだ。
同コンテストで記念スティックポスターを西又さんらとともに寄贈した人気イラストレーター、POPさんの新萌えキャラ「かやたん」「うごいす」も、同町商工会の新キャラに今夏採用されている。
ポスターを求めて県外から訪れる人もいて、携帯電話ストラップなど関連グッズの売れ行きも好調だ。
「町の新マスコットキャラにしたいという声も強い」と同商工会。
「かがり火天国」はそもそも地域の祭り。
2年前に「かがり美少女イラストコンテスト」を始めたことで、県外から多くの観光客が訪れるようになった。
国内外から作品の応募があり、今年は全国から1,000人もの人が来場した。
県外ナンバーの痛車(いたしゃ)(車体をアニメやゲームの美少女キャラのイラストなどで独自に装飾した自動車)も数十台、同町に現れ、初めて見る地元の人々を驚かせたという。
同コンテストの仕掛け人は同町出身で、現在は都内に住む会社員、山内貴範さん(23)だ。
山内さんは「町おこしが目的ではなく、自分が好きなものを地域の人々、特に子供たちに楽しんでもらいたくて企画した。東京から“萌え”キャラを単に輸入するのではなく、地元の文化や景色と融合することで、地元の人々が『こういう風に表現されるのか』とその良さを感じてくれる」と話す。
特に地元の子供たちが萌えキャラを色眼鏡なしに「かわいい」と応援してくれるという。
ところで高齢化が進み若者の少ない同町で萌えキャラに反発はなかったのだろうか?
同JAでは新パッケージ採用にあたり「絵柄が軽すぎる」との反対意見もあったという。
だが「若者のコメ離れを食い止めるには何でもしよう」(佐々木課長)と採用を決めた。
「町の大人たちの『(萌えキャラの)何が良いのか分からないけど、自由にやってみれ』という寛容さに救われた」と山内さんはいう。
それにしてもなぜ県外のオタクたちからこれほどの注目を集めるのか?
山内さんは「もともと、そのイラストレーターのファンということに加え、地域色を生かしたイラストは秋葉原では見ることができないからでは」と分析する。
「地元の良さの再発見と、地元の子供たちがプロのイラストレーターと触れ合うことで将来の励みになってくれることが目標」と山内さん。
取材時、同JAの新パッケージのキャラをみた地元の女子中学生たちが「超かわいい!」と歓声を上げていた。
新しい文化は、歴史あるこの町に、着実に溶け込んでいるようだ。
27、28日に先行発売JAうごの新パッケージ「あきたこまち」は27、28の両日午前10時から同町の盆踊り会館で先行発売される。
5キロ以上購入で袋数ごとにイラストを印刷したクリアファイルがもらえる。
産経新聞より
投稿者 trim : 2008年09月26日 15:21