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2006年04月13日
インクカートリッジのリサイクル品、販売差し止めで回収停滞の動きも
キャノン製インクカートリッジのリサイクル品に「特許権侵害」の判決が知財高裁で下った。
これは1審判決を覆したものだが、国内のプリンター市場で大きなシェアを持つ同社製品だけに、「リサイクルの流れに歯止めがかかるのでは」と懸念する声が出ている。
高裁判決の対象はリサイクル・アシスト(本社・東京都豊島区)が販売するキヤノン製プリンター用のカートリッジ。
純正品が使用済みとなったあと、それを回収して別メーカーのインクを再注入した製品だ。
これが自社特許を侵害しているとして、キャノンはリサイクル・アシストを告訴。
1審の東京地裁は2004年末、「特許権の侵害はない」として、リサイクル社の販売差し止めを求めたキヤノンの請求を棄却した。
キャノンは東京の知財高裁に控訴し、今年1月末に判決が下った。この2審判決は1審判決を覆し、「リサイクルカートリッジ」に対するキャノンの特許権を認めた。
1審と2審で見解が分かれたのは、「特許権の消尽」に関する解釈だ。
一般に中古品や消耗品には特許権は及ばない。しかし、それらを再商品化した場合、オリジナルメーカーの特許権行使が認められる。
1審の東京地裁は「使用済みカートリッジに対するインクの再充填(じゅうてん)は、本質的部材の加工に当たらず、特許権を侵害していない」と判断。
これに対し2審の知財高裁は「インクの再充填は、特許の本質的部分となる工程に該当する」として、キャノンの特許権行使を認めた。
キャノンの特許は、インクをためるために異なるスポンジを2段構造で組み合わせた点にある。2種類のスポンジが接する境界面に、液体を保存する層が生まれ、それがカートリッジのインク漏れを防ぐのだ。
これが使用済みとなり回収されたあと、いったん乾いていたスポンジに、インクが再注入された時点で、「境界面の液体保存性」も復活する。
この復活を2審は「特許の本質的部分の使用」と見なしたのだ。
こうした技術的争点とは別に、逆転判決のもう1つのポイントとして、「消費者の利益や環境保護」といった社会的側面が挙げられる。
プリンターのインクカートリッジ市場はキャノンとセイコーエプソンの独占状態で、「値段が高止まりした純正品だけを認めることは、消費者に不利益をもたらす」とリサイクル社は主張する。
同社の見積もりによると、カートリッジ純正品の実勢小売価格が800~850円であるとすれば、同社が販売するリサイクル品の値段は600~700円という。
これに対し、2審判決は「キャノンの特許権行使が消費者の利益を害しているという主張は、証拠上認められない」と完全に退けた。
また今回の判決は、リサイクル促進と環境保護に関して、これらを逆行させるとの指摘の声も上がっている。
実際、この判決を受けて山梨県南アルプス市役所では、リサイクル用のカートリッジ回収ボックスを撤去した。
ただしキャノンなどオリジナルメーカーも家電量販店に回収ボックスを置き、集めた使用済みカートリッジを、別製品の材料や熱源などにリサイクルしている。しかし回収率がどの程度かは明らかではない。
さらに、今回の判決がインクカートリッジ以外へも波及する、という懸念がある。
例えばレーザープリンターやコピー機などのトナーカートリッジでは、リサイクル品が広く使われている。
リサイクルインクカートリッジが特許権侵害と判定されたことで、既に市民権を得たともいえるトナーのリサイクル品に対する訴訟も起こり得る。
そうした連鎖的な訴訟は、循環型社会へ向かう流れにブレーキをかけるだろう。
今後、特許権と環境保護をバランスさせる業界システムが構築され、その仕組みが明確に開示される必要がある。
YOMIURI PCより
投稿者 Melody : 2006年04月13日 11:03